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関係:同級生。同じ部所属。
場所:河原
内容:仲間で蛍を見にきた私たち。でも、気が付いたら彼と二人きりになっていて――。

下のSSと同じくネット友人が更新したイラストを見て「この二人で何か書きたい」と思って作ったSS。
蛍を題材にしたのは「蛍の時期だな~」とふと思ったからです。そして、実は私も高校の頃に同じ部の仲間と蛍を見に行ったことがあります。書いている間中、その時のことがリアルに頭の中に浮かんでました。
そんな懐かしさもこもっている作品。楽しんでいただけますように。

読んでみようと思った方は「SSを~」をクリック

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 同じ部の仲のいい者で集まって、川の横に沿った遊歩道で蛍を見ていた。自転車をこいできたせいか、風は涼しいけれどじんわりと暑い。
 こうして改めて蛍を見ることなんてめったにないので、その幻想的な光景にすっかり没頭していた私は、気づけば一人の男子と二人きりになっていた。
「あれ? みんなは?」
 声が震えてしまったのは、警戒しているせいじゃない。その男子が――私の好きな人だから。
 蛍をつかまえようと両手を広げながら、彼はくすりと笑う。
「知らなかった? あいつら付き合ってんの。俺らは口実で呼ばれただけ」
「えっ? でも、部内恋愛は……」
「だから、こういう回りくどいことするんだろ」
「そ、そっか……口実だったんだ」
 だからといって、彼と二人きりにされてしまうのは非常に困る。どうして、他の人を呼んでくれなかったのか。私の気持ちは誰にも言ってないから、彼がここに呼ばれたのは偶然なのだろう。
「つかまえた」
 両手で何かを包み込みながら、彼が近づいてくる。
 私の目の前で少しだけ手を開いた。蛍が淡く光っている。
「手、広げて」
 言われた通りに手を開くと、蛍を移し替えようとする彼の手が重なった。
「えっ……うわっ」
 思わず離してしまった。解放された蛍は草むらの中へ飛んでいく。
「ご、ごめん……」
「つかまえて楽しむもんでもないし、気にすんな」
「綺麗だった」
「まあ、な」
 沈黙する私たちの前を、何匹もの蛍が光を放って飛んでいる。その光景のせいか、彼と二人きりという状況のせいか、なんだかむしょうに手をつなぎたくなった。でも、付き合っているわけではないのにいきなり手をつなぐのはおかしい。なにより、私だけが好きなのだから。
「暑いね」
 汗で首にはりついた髪を払った。
 その時、突然、彼の手に首を引き寄せられた。首を覗き込むように彼が顔を近づけてくる。
 首に、彼の息がかかっている。顔をそらしたけど、その吐息からは逃げられそうもない。
「い、いきなり、どうした、の? なんで?」
「後で言うから」
「汗、かいてるのに」
「大丈夫」
 何が大丈夫なのか、と問おうとした瞬間、首に何かが触れた。手じゃないのはわかる。彼の顔はあいかわらず近い。触れたものが何なのか予想はついていた。
 首が解放される。
 彼から離れて首を押さえた。
「今の……なに?」
「我慢きかなくなった」
「意味、わかんない」
「したいって思ったら……してた」
「二重人格?」
 ふっ、と彼が吹き出した。その笑みは柔らかい。
「そういうわけじゃないけど、それに近いもんはある」
「びっくりした」
「うん。……ごめん」
「どうして、あんなことしたのか教えて」
 しゃがみこんだ彼は目をそらすかのように、近くの草むらに留まっている蛍を見つめ始める。
「こんな状況だから言うんじゃないけど……好きな女と二人だと思ったら、こう、ムラムラときて……」
「ム、ムラムラ?」
「あっ、そこは、まあ、適当に流して……」
 両手を広げた彼は、また蛍を狙っているようだ。
 彼の後ろへしゃがみこんだ。大きな背が目の前にくる。
「好きって……言った?」
「言った」
「私も、って言ったら?」
「えっ、マジで?」
 不安定な状態でしゃがみこんでいたらしい彼は、そのまま振り向こうとして尻餅をついた。色のついたアスファルトに座って、改めてこちらを向いた。
 夜の暗さのせいか、彼の顔がはっきりと見えない。だから、彼のほうを向いてこんな告白もできるのかもしれない。
「マジっすよ」
 笑顔でそう返し、呆然と座る彼を見下ろしたまま立ち上がった。
 彼の背に一匹の蛍がとまっていた――。


 ◇終◇

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読んでくださってありがとうございます。よかったら感想をコメント欄などから聞かせてください。こっそりと励みにさせていただきます。
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有難うございます。
いつも私なんぞのイラストを文章にして頂き、有難うございます(笑)

ひょっこり出てきたあの落描きの子らも、まさかこんな素敵なシチュエーションを与えられ、命を吹き込まれるとは思っていなかっただろうなぁ。
いやはや、一読者としてもあの子達を描いた者としても、とてもキュンキュンさせて頂きました♪水月さんの設定から、新しくイラストを描き直したくなった位に(笑)
かなむ 2007/06/13(Wed)08:42:41 編集
Re:有難うございます。
いえいえ、こちらこそ「浮かんだから」と勝手に文章にしているにも関わらず、毎回温かな感想をありがとうございます。
叶夢さんにとっては「ひょっこり落書き」であろうと、私にとっては「ビビッときたイラスト」に間違いはありませんので、どうぞ、これからもばんばん素敵絵を更新してくださいな。どんな絵にビビッとくるか私自身もわからないので「数打てば当たる」方式で(笑)
で、すでにメールでも叫びましたが、新しいイラストをぜひ形にしてください! 見てみたいッス! そして、その絵からまた私がSSを……(笑)
【2007/06/14 00:15】
SS探しなどにどうぞ
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