睡眠不足に捧げるSS

関係：学生同士。彼、眼鏡男子。
内容：プラネタリウムでデート。途中で眠ってしまった私。出てきてから「寝てなかった？」と言う彼。

睡眠不足だというネット友人のために何かSSを書いてやるか、と思って書き始めたら出来上がってしまったもの。セリフだけSSのつもりだったのにきちんと描写まで入れてしまった。前作のセリフだけSSの二人のような、そうではないような……(ご判断はお任せ☆笑)

読んでみようと思った方は「SSを～」をクリック。

　++ 睡眠中 ++

　プラネタリウムから出て階段を下りている時、ぽつりと彼が言った。
「あんたさ、途中で、寝てなかった？」
　すごかったね、なんて言おうと思った矢先に先手を打たれ、笑顔のまま固まってしまう。彼の言ったことは本当で、日頃の睡眠不足がたたって途中で眠ってしまったのだ。プラネタリウムはリクライニングチェアのような絶妙な角度で私の体を受け止めてくれていた。
「ちょ、ちょっとだけ、ね」
「ちょっと？　がっつりと眠ってたように見えたけど？」
　眼鏡の奥から見つめてくる目は、明らかに私の発言を疑っている。
　ここまでばれているなら取り繕ってもしかたがない。
「記憶がないくらい熟睡してた……ごめん」
「謝らなくていい。断ればよかったのに」
　とんでもない、と私は手を振る。
「それは、もったいなくて、できません」
「もったいない？」
　出不精の彼が、部屋以外のデートを引き受けてくれるのは珍しいことだ。暑い、眠い、寒い、と実にさまざまな理由で断られてきた。
「二人で出かける、ってめったにないし」
　今度は彼の居心地が悪くなったらしい。ぎこちなく眼鏡をいじり始めた。
「まあ、それは……確かに」
「でしょ？　だから、断れません」
「でも、眠かったんだろ？」
「……うん」
　認めてしまったけれど、帰ろう、と言われてしまうのだろうか。少しずつ不安は募る。あそこで眠らなければよかった、と後悔もよぎる。
「今も、眠い？」
「ううん、大丈夫。本当に眠ってしまってごめんなさい」
「俺は別に怒ってない。ただ、眠くなったら言って」
「言ったら、帰る？」
「言ったら……二人きりになれるところに行く」
　彼は歩き出す。
　二人きりになれるところ、と聞いてなぜかいかがわしい場所が浮かぶ。まさかね、と振り切るように彼を追いかけた。
「俺としては、あんたが寝てくれてて都合がよかったけどね」
「都合？　悪いことでもした？」
　彼が少しだけ早足になる。
　追いかけるとさらに足が速まった。まるで私から逃げたいみたいだ。
「口、くっつけただけ」
　追いかけている足が止まってしまった。
「く、くち？」
「悪いことかどうかはあんたが判断して」
　足を止めた彼が手を差し伸べる。
「今度は起きている時に、して」
　走り寄って手を重ねた。


　◇終◇

---------------------------------
読んでくださってありがとうございました。このようなところですが、感想などありましたらコメント欄などから聞かせてください。