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関係:忍者と姫
場所:月の輝く夜の部屋
内容:淫らな夢から覚めた姫。そこへ彼が来る。「近づかないで」と言う姫。

前回の忍者SSの続きでもいいですし、単体の物語でもいいです。私はどっちでもいいかな、という感じで書いたので読まれた方の好きにご想像ください。あ、でも忍者の彼は前回を意識してるかも……。
さて、今回のSSは晩御飯後にちょっと熟睡して寝ぼけつつ入浴した時に思いついたものです。夢から突然覚めた時って本当に夢と現実の区別がつかないような、夢を引きずっているような変な感覚にとらわれますね。ボーッとお風呂入りつつもネタを思いついた自分がすごい(笑)

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 ++ 残夢 ++

 今宵も紺の装束に身を包んだ彼の唇が、ゆっくりと私の唇に重なってくる。
 私の上に覆い被さっている彼は、裾から差し入れた手で優しく胸を包んだ。つかむわけでもなく、そのまま軽く撫でる。
 優しい愛撫に、ふっ、と私の口から息が漏れる。
「よいか?」
「……ええ」
 緩んだ襟元へと彼の唇は移動し、鎖骨をたどるように舌先を滑らせる。
 その間も大きな手はやんわりと胸に触れている。
 胸元にある彼の頭を抱きしめた。
 彼の指が下の裾をゆっくりと広げる。
 太ももを指がすべる感触は、くすぐったいながらも甘美だ。
 指がゆっくりと私の中心へと近づいていく――。


 目を開けると、薄明かりに照らされた天井が視界に広がっている。
 着衣に乱れはない。もちろん、彼が覆い被さってなどいない。
 私はゆっくりと上半身を起こした。
「……夢だったのね」
 ほっと安堵した後、わずかながら頬が熱くなる。寝ぼけているのか、まるで彼の手に先ほどまで体を触られていたような感覚がするのだ。
 水を飲みに行こうとした私の背後で小さく風が動く。振り向くと、黒い人影がすらりと立っていた。突然の侵入者だが人を呼ぶ必要はない。
「私、あなたの名を知らないわ」
「影に名など、ない」
 耳から入り込んだ低い声は甘く私の心を震わせる。
 影はするりと私へ近づいてくる。
 夢の光景が鮮やかに脳裏によみがえってきた。
「近づかないで」
「何故」
「夢を……見たの」
「我に殺される夢……?」
「いいえ、あなたは私を殺しはしない。違うの」影は私の制止も聞いてくれない。「お願いだから、近づかないで」
 目の前に彼がいる。相愛ではないというのに、たくましい胸は妖しく私を誘う。手を伸ばせば抱きついてしまうだろう。
 何故、と彼はもう一度訊ねてきた。
 私は、ただ、いやだと首を振る。
 彼が右手を上げる。突如、強い背中を引き寄せられた私は、倒れこむように彼の腕の中へとおさまった。
 私を抱きしめているというのに、彼は何も言わない。絵巻物の公達なら、耳元で多くの言葉を囁くだろう。
 腕を回そうとした瞬間、抱きつくことを拒むように彼が離れた。
「……何故?」
 今度は私が彼へと訊ねる。
 何故、私の夢など知らない彼があんなことをしたのか。
 そして、何故、私から求めようとすると離れるのか――。
 だが、何も答えを与えず、彼は私の前から去っていった。
 彼の肩越しから見た時と同じく、月は柔らかく闇夜を照らしていた。


 ―了―

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