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関係:忍者と姫
場所:夜、姫の寝る所
内容:姫が他国へ嫁ぐという書状が何度も何者かに盗まれる。使者に怪我は全くない。破談になった夜、姫は開口一番、彼へ問いかけた。
前回のSSを書いた翌日、友人からSS感想をもらって返事をしている時に思いついたネタです。携帯のメモ帳にずっと残していたのですが、ようやく文章にすることができました。今回は彼の想いもちらりと見せてるつもり。
もう、なんていうか……やばいくらい忍者の彼を書くのが楽しくなってます。というか、自分で作った人物なのにすごくツボにハマってる(笑)
シリーズというか……これまでと変わらず、ぶらぶらっと気が向いたら書いていきたいと思います。
場所:夜、姫の寝る所
内容:姫が他国へ嫁ぐという書状が何度も何者かに盗まれる。使者に怪我は全くない。破談になった夜、姫は開口一番、彼へ問いかけた。
前回のSSを書いた翌日、友人からSS感想をもらって返事をしている時に思いついたネタです。携帯のメモ帳にずっと残していたのですが、ようやく文章にすることができました。今回は彼の想いもちらりと見せてるつもり。
もう、なんていうか……やばいくらい忍者の彼を書くのが楽しくなってます。というか、自分で作った人物なのにすごくツボにハマってる(笑)
シリーズというか……これまでと変わらず、ぶらぶらっと気が向いたら書いていきたいと思います。
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++ 花 ++
一国の主の娘ともなれば、嫁ぐ話が出てもおかしくはない。私にもその話はあった。そして、相手の城への書状まで用意された。
だが、書状が何者かに何度も盗まれた。使者に怪我などは全くない。
結局、この城からの書状が届かないことにじれた相手が破談にしてしまったのだ。
私には犯人の見当はついている。だが、父に言うわけにはいかなかった。
言えば、彼が捕まってしまうから――。
破談になった夜、寝所へと訪れた彼に一番に聞いた。
「あなたでしょう?」
「何を……」
「嫁ぐ話が出ていたの。その書状が何者かに盗まれたのよ。何度も、ね。でも、この城から使いに出た者には傷一つつけられていない。そんな器用なこと、あなた以外にできる人はいないでしょう?」
ふっ、と彼の笑む声が聞こえたような気がした。よくわかったな、とでも言うかのような。でも、彼は一言も答えを発していない。
私は薄明かりの中で微笑んだ。
「実は、盗まれて安心しているの。まだ、嫁ぎたくないから」
彼が盗んでくれたのだと私が信じていればそれでいい。そう思うことにした。
私の足元に白いものが投げられる。思わず飛び退いてしまったけど、近づいてよく見ればそれは小さな一輪の花。
「これは……」花を拾い上げる。「やはり、あなたが盗んでいたのね」
彼が投げたのは、盗まれた書状に毎回添えていた花だ。これを投げたということは、盗んだことを認めたようなもの。
「誰かの命令?」
「……否」
「では」期待を喉へとのぼらせる。「あなたの意思?」
無言の彼としばらく見つめあう。
答えを聞くまで引くつもりはない。
花を、と布に覆われた彼の口が動いた。
「花を手に入れんとした。だが、影の傍にあっては花も色を失う。ゆえに……捨てた」
真意の曖昧な言葉だったが、その中にあるのは確かに彼の思い。花ではない何かも一緒に捨ててしまったのか、彼の瞳は少し寂しそうに伏せられている。
私の手の中にある花を見つめた。月夜の下で白く輝いている。色を失ってなどいない。
「あなた、優しいのね」
「優しい?」
「花が欲しいのに、花のために捨てることを選んだ。でも、花はそんなに簡単に色を失ったりはしない」
彼の目の前に白い花を差し出す。光を発していないそれを彼は眩しそうに見つめた。
「意外と強いでしょう? だから、私も強くなるわ。今後、誰のところへも嫁いだりはしない」
「……無理だ」
彼へと近づき、頭一つ高い位置にある目を見上げる。
「私が嫁ぎたいところは一つ」
どこへ、と彼は聞くこともなく、じっと私を見下ろしている。
言葉の裏に込めた私の気持ちに気づいてくれただろうか。城の娘が忍へ嫁ぐ話など今まで聞いたことはない。だが、私は嫁ぐなら彼しか考えられないのだ。
「これからも書状を盗んでほしいの」
「我への命か?」
「いいえ、これは……お願い、よ」
私の耳元へ彼が顔を寄せる。
「おぬしの願い……承知した」
吐息がかかるほどの位置でささやかれ、思わず耳に手をあてる。
風を切るような音と共に、彼は寝所から去っていった。
私の手には白い花だけが残っている。
彼の手に入れたい花が私であればいい――。
花弁にそっと口付けた。
―了―
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読んでくださってありがとうございました。よかったらコメント欄などから感想の声を聞かせてください。今後の創作の励みにさせていただきます。
++ 花 ++
一国の主の娘ともなれば、嫁ぐ話が出てもおかしくはない。私にもその話はあった。そして、相手の城への書状まで用意された。
だが、書状が何者かに何度も盗まれた。使者に怪我などは全くない。
結局、この城からの書状が届かないことにじれた相手が破談にしてしまったのだ。
私には犯人の見当はついている。だが、父に言うわけにはいかなかった。
言えば、彼が捕まってしまうから――。
破談になった夜、寝所へと訪れた彼に一番に聞いた。
「あなたでしょう?」
「何を……」
「嫁ぐ話が出ていたの。その書状が何者かに盗まれたのよ。何度も、ね。でも、この城から使いに出た者には傷一つつけられていない。そんな器用なこと、あなた以外にできる人はいないでしょう?」
ふっ、と彼の笑む声が聞こえたような気がした。よくわかったな、とでも言うかのような。でも、彼は一言も答えを発していない。
私は薄明かりの中で微笑んだ。
「実は、盗まれて安心しているの。まだ、嫁ぎたくないから」
彼が盗んでくれたのだと私が信じていればそれでいい。そう思うことにした。
私の足元に白いものが投げられる。思わず飛び退いてしまったけど、近づいてよく見ればそれは小さな一輪の花。
「これは……」花を拾い上げる。「やはり、あなたが盗んでいたのね」
彼が投げたのは、盗まれた書状に毎回添えていた花だ。これを投げたということは、盗んだことを認めたようなもの。
「誰かの命令?」
「……否」
「では」期待を喉へとのぼらせる。「あなたの意思?」
無言の彼としばらく見つめあう。
答えを聞くまで引くつもりはない。
花を、と布に覆われた彼の口が動いた。
「花を手に入れんとした。だが、影の傍にあっては花も色を失う。ゆえに……捨てた」
真意の曖昧な言葉だったが、その中にあるのは確かに彼の思い。花ではない何かも一緒に捨ててしまったのか、彼の瞳は少し寂しそうに伏せられている。
私の手の中にある花を見つめた。月夜の下で白く輝いている。色を失ってなどいない。
「あなた、優しいのね」
「優しい?」
「花が欲しいのに、花のために捨てることを選んだ。でも、花はそんなに簡単に色を失ったりはしない」
彼の目の前に白い花を差し出す。光を発していないそれを彼は眩しそうに見つめた。
「意外と強いでしょう? だから、私も強くなるわ。今後、誰のところへも嫁いだりはしない」
「……無理だ」
彼へと近づき、頭一つ高い位置にある目を見上げる。
「私が嫁ぎたいところは一つ」
どこへ、と彼は聞くこともなく、じっと私を見下ろしている。
言葉の裏に込めた私の気持ちに気づいてくれただろうか。城の娘が忍へ嫁ぐ話など今まで聞いたことはない。だが、私は嫁ぐなら彼しか考えられないのだ。
「これからも書状を盗んでほしいの」
「我への命か?」
「いいえ、これは……お願い、よ」
私の耳元へ彼が顔を寄せる。
「おぬしの願い……承知した」
吐息がかかるほどの位置でささやかれ、思わず耳に手をあてる。
風を切るような音と共に、彼は寝所から去っていった。
私の手には白い花だけが残っている。
彼の手に入れたい花が私であればいい――。
花弁にそっと口付けた。
―了―
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プロフィール
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水月
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女性
自己紹介:
年齢:30代前半
在住地:近畿地方
執筆歴:15年ほど
執筆ツール:WinXPノートパソコン
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