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関係:教師と生徒
舞台:離任式~体育館外
内容:離任してしまう先生とその先生を好きな女の子の話

私は某所でのとある方のリクエストの内容→先生がどっかの学校に離任するって事になって,あんま仲良くなかった生徒から告白される……にそって書いただけです。
いつものSSよりも少し長めになりましたが、これでも短くしたほうだったりします(笑)
読んでみようと思った方は「SSを~」をクリックしてください。

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 ++ 離れる ++

 けだるい春休みの朝、何気なく新聞を広げ、掲載されている教師の異動欄を見て、一気に目が覚めた。そこに私の好きな人――先生の名前があったから。
 春休み中に行われる離任式は明後日。慌てて、お年玉の袋を確認する。
 そして、私はお花屋さんへ電話をかけた。


 壇上では先生が別れの挨拶を述べている。
 今まで、春休みなのに学校に来なければいけない離任式は、ただうっとうしいだけの行事だった。でも、今日は先生の挨拶にいろんな想いがよみがえる。
 手の中の小さな花束を握り直す。カサリと体育館に響き、先生が一瞬だけ私を見た。思わず、目をそらしてしまう。
 式の中、先生が私を見たのはその一度だけだった。


 式の後は体育館で解散となる。
 体育館の外、先生は数人の生徒に囲まれ、大きな花束を押し付けられている。
 友達と話しながら、先生が生徒から解放されるのを待っていた。
「じゃあね」
 先生を囲んでいた生徒が帰り始め、私の友達も軽く手を振って校門へ向かっていった。
 他の先生も職員室に戻ったのか、もうここにはいない。花束を持った先生と、渡せない花束を持った私だけが立っている。
 先生が歩きだす。花が揺れる。
「早く帰りなさい」
 強い香りに包まれた。
「先生、あの……これ……」
 背中に隠していた花束を差し出した。
 しばらく花束を見ていた先生は、少しかがんで私の前へと体を寄せる。
「持てないから、ここに適当に突っ込んでくれるか?」
 動いても落ちないように、先生の胸元へ力を込めて花束を挟む。
「これでいいですか?」
 花束を覗き込んだまま先生のほうを向くと、至近距離に顔と目があった。
 なぜか、目をそらせない。
 先生も、なぜか、じっと私を見ている。
「聞きたいことがある。お前の担任でもない俺に、なぜ花束があるんだ?」
 不自然ではない理由を答えなければならない。クラスの生徒はどういう理由で花束を渡すのだろう。
「お疲れ様でした、の意味を込めて、です」
「あまり話したことのない俺に?」
「それは……」
 あまり話したことのない先生にわざわざ生徒が花束を渡す。明らかに不自然だ。肝心な気持ちを言わずに済む答えなんて持ち合わせていない。
「クラスで集めた金じゃないな?」
 さらに先生が聞いてくる。そして私は追いつめられる。
 沈黙が続き、先に離れたのは先生。自嘲気味の笑いを浮かべて、
「すまない。生徒に好かれてる、とうぬぼれた」
 花束を抱え直した。
 その姿がなんだか寂しそうで、私は先生の腕をつかんで言っていた。
「私、ちゃんと好きです、先生」
「んっ……?」
 驚く先生の顔を見て、足りない言葉があることに気付く。
「あ、生徒として……」うつむいて、訂正しようとして――止めた。「じゃないです。私個人として、です」
 今日を過ぎれば、先生と会うことはなくなってしまう。気持ちをごまかしても仕方がないと思ったのだ。
 温かい風が吹いた。
 花畑の中にいるかのような香りが私と先生と包む。
 きっと断られる。でも、告白できただけでもよしとしておこう。
「携帯電話、持っているか?」
「あ、はい」
 突然の先生の言葉に驚きながらも、鞄から携帯電話を取り出す。先生が『教師である』ことを思い出した。
「持ってますけど、学校では使ってません」
 高校では携帯電話は禁止されている。
 先生が笑った。
「没収はしない。とりあえず、今から言う番号へ電話をかけてくれないか?」
「はい。えっと……どうぞ」
 携帯電話を開き、ゆっくりと読み上げられる数字を押し、最後に通話ボタンを押した。
 どこからか、小刻みに唸るような音が聴こえてくる。
「切って」
「はい」
 音はやんだ。
「落ち着くまで一緒にどこか行ってやることはできない。それでもいいか?」
 意味がわからなかった。私は告白の返事を待っているのに。
「は、い?」
 私の疑問を置いて、先生はさらに続けた。
「電話とメールだけになる」
 しばらく考えて――わかった。
「そ、それって、先生……」歓喜のせいか驚きのせいか声が震える。「私とお付き合いをするってこと、ですか?」
 先生が頷いた。
「簡単には会えない。色々と問題も出てくるだろう。それでもよければ、になる」
「いい」何度も強く頷く。「それでもいいです。全然、平気です」
 安堵するかのように、先生は深く息を吐く。
「言わずに行くつもりだった。まさか、言われるとは、な」
「言うつもりなかったのに……言わされました」
「ああ、無言の圧力をかけていたのか、俺が」
「ちょっと、怖かったです」
 先生が笑い、つられるように私も笑う。
 少し強めの風が吹いた。
「言ってほしかったんだな、きっと……」
 風の流れた先を見て、先生はぽつりと呟いた。
 目の前で揺れる花を私はじっと見ていた。


 ◇終◇

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読んでくださってありがとうございました。
気が向かれましたら、コメントなどから感想を聞かせてください。
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うふふ。
余裕に見せかけて、本当は余裕の無い、でもそういう風に見せることが出来る大人の男性って、魅力的ですね(笑)。で、最後にちょっと本音が出るトコがまたイイですね~(笑)その相手に自分に正直に直球で行く女の子もある意味羨ましいな。ドコに置いてきたのだろう?自分は。と思わず思いましたョ(笑)
水月様の書く男性はホント魅力的で私のツボを刺激しまくりで、悶えさせて頂いてます。女の子も、打算で生きてる私には眩しい位のコ達ばかりで、「私もこんなコならきっと人生変ってたろうな~」と思いました。ははは。
素敵な作品を読ませて頂き、ホントありがとう御座います♪
幸枝 2007/03/13(Tue)01:41:58 編集
Re:うふふ。
素早い感想ありがとうございます。更新して二時間も経ってないうちにコメント書かれてないですか? 幸枝さんのチェックは隙がない(笑)
私の書く先生はどうにも大人の余裕を振りまきがちなのです。先生という立場と大人という年齢でなんとなく「余裕そう」と思ってしまうんですよね。そんな先生に本音をどこで言わせるかがキーポイントだな、と書きながらいつも思ってます。これもそう。
そんな先生だからこそ、やはりお相手の女の子には直球勝負でいってもらわないと、書いていて楽しくないです。話も進まない(笑) 私も遥か彼方に置いてきた(落としてきた?)純情と思春期の記憶をかき集めて小説を書いてますよ(^_^;)
私が書きたい、絡ませたい男性や女の子ばかりを書いていますが、どちらも魅力に感じていただけて嬉しいです。ツボを刺激されまくってますか、それはよかったです、本当に(笑)
私の小説でよかったら、小説内でだけでも女子高生気分で楽しんでください。存分に男性に振り回されちゃってください。楽しんでいただけるだけで私は十分嬉しいです。こちらこそ、感想を毎度ありがとうございます♪
【2007/03/13 19:07】
お久しぶりです
無言の圧力に加えて、追い詰められる先生と生徒!
私はこのシチュエーションが大好きなんですよぉ。ビクビクするような、天然ちゃんだったり、などなどかなりツボです。
できることなら、先生はニヤニヤ笑って壁に押しつけ、言わせるみたいなとか追い詰められて逃げてまた追い詰められるなどがいいですよね。大好きです!!はい。
すみません。でしゃばりました。
でも管理人様に感化されてしまい、長々と・・・

ところで遅ればせながら、キリトと読みますです。
今回もキュンキュンするお話をありがとうございました。また楽しみにパソコン&携帯でお待ちしております。頑張ってください!
桔李徒 2007/03/13(Tue)12:30:11 編集
Re:お久しぶりです
またもや感想をありがとうございます。
おお、桔李徒さんの大好きシチュエーションでしたか。……そ、そうなんですか(気迫に怯えてみる。笑)
このSSの女の子はいまいちビクビク天然ちゃんではないと思いますが……。追いつめられて逃げて、また追いつめられる……ってそんな追いかけっこな展開はSSに詰め込めないですよ(・_・;
はい、桔李徒さんの妄想しかと受け止めました。言葉で攻める先生は書いたことあると思いますが、実際に壁に追いつめるのは……ちょっとベタだと思って避けてるので書いたことないかもしれません。私は言葉や目などの空気で追い詰める先生が好きなのでついつい今回のSSみたいな先生を書いてしまいがち(嗜好の問題?笑)
今回もまた桔李徒さんのキュンキュンゾーンに入ることができて光栄です。更新は不定期でお待たせしまくる時もあると思いますが、楽しみにしていただけると嬉しいです。
【2007/03/13 19:18】
SS探しなどにどうぞ
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年齢:30代前半
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