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関係:女子高生と大人(昔恋人だった?)

今回はファンタジーちっくです。というのも、とあるファンタジー(と思われる)PC恋愛ゲームの音楽を聴き絵を見てしまったからです。ストーリーやキャラ紹介などは一切見ていません。
銀の長髪男性と金の長髪男性が泣いている絵。ゲームの絵でも男性が泣いているものはほとんど見たことがないせいか、その絵を見た瞬間にグアーと私の中から湧いてくるものがありまして……さらにそのゲームのオープニング曲が私の中の絵のイメージに合っていて、とにかくもう湧くものを止められずに文字にしました。「私は覚えてないのに彼を見た瞬間なぜだか涙が出た」この1文のようなシーンがとにかく書きたかったんです。
二人の過去だとか二人は何者だとか、とにかく色々とツッコミどころはあるかもしれませんが、私自身も特に深く考えずに「切ないものを!」と書いたので、SSの雰囲気を楽しんでいただければ幸いです。ちなみに、過去に二人は実は…、片方が記憶をなくしていて…、というような話は割と好物です(笑)

余談。最近ちょっと書いてみたいかなと思っているもの:ヤンデレ(どんなのかはっきりわかってないです。笑)

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 ++ 記憶 ++

 平日の昼、住宅街を歩く人はほとんどいない。いや、私の歩く道には誰もいなかった。
 退屈な学校を早退して歩いていた私は、後ろから突然名前を呼ばれた。静かで低いその声に聞き覚えはなく、振り向けば見知らぬ男性が立っている。
「……誰?」
 私よりも背の高い人は、銀の長い髪をなびかせ、私をじっと見下ろしている。目の色は影に隠れて見えない。
 知らない男の人に声をかけられれば逃げるのが当たり前だ。なのに、私の足は動かず、目はその人へ引き寄せられていた。
「お前は私を知っている」
「知らない」
「記憶はなくとも、心が私を覚えているはずだ」
「本当にあなたのことなんて……」
 知らない、と続けようとした私の声が震えだす。
 本当に彼の顔に見覚えはない。でも、彼が言葉を発するたび、その声が耳に届くたび、私の気持ちの奥底が揺さぶられる。溢れる気持ちが涙となって頬を伝う。
「待たせたな」
 呟いた彼が、そっと私の頬の涙を指で拭う。
 頭では戸惑いながらも、この指に触れて欲しかったのだと心が喜んでいる。
「さわら、ないで。本当に知らない。私……知らない、のに」
「私は、あの日からずっとお前を探していた」
「あの日って何? そんなの知らない」
 そう、知らないはずなのに、私の脳裏には、銀の髪の男性が目に腕をあてて静かに泣いている光景が浮かぶ。ただ泣いているだけの姿――でも、思い出した瞬間に私の胸は締め付けられる。
「覚えていない、か……」
 彼が哀しげに呟くと同時に、私の口は無意識に動いていた。
「泣かないで。私が選んだことだから」
「……なんだと?」
「……えっ?」
 私たちは互いに顔を見合わせた。
 私の顔をうかがうように見ていた彼は、やがて、また哀しそうに目を伏せた。
 覚えていなくても、私と彼の間には何かがあったのだ。そして、彼にこんな顔をさせているのは私なのだろう。
「ごめん。本当に覚えてないの。でも、ずっと私はあなたに会いたかった……みたい。探してくれてありがとう」
「抱きしめても……かまわないか?」
 しぼりだすような言葉に私は頷いた。
 彼は私のことを知っている。ずっと探していた人に会えたのだから、本当はもっといろいろなことをしたいだろう。ただ、私が覚えていないから我慢しているのだ。そう思えば、断るという言葉は頭から消えていた。
 ゆっくり伸ばされた腕は私の体を引き寄せ、そして、力強く腕の中へと押し込めていく。
 苦しかった。彼の気持ちが流れ込んでくるようで、私はやり場のない思いを腕にこめ、彼を抱きしめた。涙が溢れて止まらない。満たされるような思いが体の中に広がっていく。
「後悔の念を抱えながら、私は幾日も心に残るお前の影を追った。お前に……会いたかった」
 私の奥から何かが出てこようとしている。彼に会いたいと求めている。おそらく、それはなくしただろう記憶。日々の生活の中、ときどき顔を見せるその記憶の存在を私は知っていた。でも、ずっと目をそらしていたのだ。もう、怖くはない。私には彼がいる――。
 心の流れるまま、私はその記憶を迎え入れた。
「ごめんなさい。あなたの記憶までは消せなかった。私を覚えていてほしい、探してほしいと望んでしまった。辛い思いをさせてごめんなさい。……戻らなければならないのね、私たちの世界へ」
 私の髪をそっと撫でる指。あの頃、彼がよくそうしてくれた。
「いや、私も堕ちてきた。お前と同じ、ただの人間だ」
「どうしてあなたまで……!」
「連れて戻るつもりなど初めからない。私はただお前と共にありたいだけだ」
 顔を上げれば、あの頃と変わらない彼の笑顔があった。
「全てを思い出したのだな?」
「……ええ」
「覚えていない、知らない、と言われるのはもうごめんだ」
「本当に覚えていなかったの。ごめんなさい」
「もう、いい……」
 髪をすいた彼の指が、私の顎をすくいあげる。
 光を受けた彼の髪が輝いている。愛しい銀の色を瞼の裏に残し、私はそっと目を閉じた。


 ◇終◇


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