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関係:教師と生徒

久しぶりのSSです。これだけの期間書かなかったのは腰痛以来じゃないでしょうか(笑)
今作を衝動的に書くきっかけになったのは、久しぶりに更新されていたネット友達サイトさんのギャルちっくイラストです。あれを見た瞬間、脳内にキャラやお相手や1シーンが一気に浮かんできました。これは書かねばと思い、夜の入浴中、歯磨き中に流れを練り、イラストを横に見ながら書き始めると、久しぶりの創作だというのにほとんど詰まることなく、流れるように浮かんでくる映像を文章にできました。
思ったことがすぐ口に出るちょっとおバカな感じの女の子と、学校では堅物っぽい先生のやりとりを書くのはものすごく楽しかったです。後半の彼女の妄想はもっと18禁方向にいっていたのですが、そこはサイトの訪問者層を考えて少しセーブ(笑)
最初の構想では「私好みのイケメンだと思ったら……」「教師をナンパか?」とか「眉毛が半分なくなってるぞ」「え、うそ!書かなきゃ」「化粧と美術の成績は関係ないんだな」「イヤミ?」とかいうようなやりとりを書く予定でした。いや、書いてる途中もこれらのやりとりを織り交ぜようとしましたが、どうにも機会がなくて流れていってしまいました。
久しぶりの創作なうえに衝動的に短時間で書けたので未熟なとこもあるとは思いますが、皆さんにも楽しんでもらえるものになっていれば嬉しいです。なんだか創作の勘がちょっと戻ってきた気配……

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 ++ 止められない ++

 外に出たものの特に買いたいものも見つからず、なんとなく家にも帰りたくない。慣れないナンパに挑戦してみたくなったのは、そんな行き場のない気分のせいだ。
 ウィンドウを覗くふりをして、道を歩く男の人を物色する。買い物と同じく、やっぱり心惹かれる人は現れない。
「……つまんない」
 そう呟いた私の腕を、通り過ぎる男性のシャツがかすめていく。ふと見上げてみれば、服装はおしゃれではないけど顔は私好み。頭は一瞬悩んだけど、本能的に惹かれるように男性の腕をつかんで引き止めていた。
「……何か?」
「あっ、えっと……ちょっと……こっち来てもらえます?」
 人が行き交う中ではゆっくり話すことすらできない。少々強引に男性の腕をつかみ、シャッターのおりた店の前へ誘導する。
 男性の手を離し、大きく深呼吸をして、改めて引きずり込んだ男性の顔を見た。
「援助交際する金なら無い」
 無愛想に私を見下ろしたまま、早口で男性が言う。
 髪はふわふわに巻いているし、メイクはばっちりで、ツメにはネイルアート、腕にはタトゥーシールを貼り、耳にはピアスもつけている。見かけは立派にギャルかもしれない。でも、知らない男性に第一声でそんなことを言われる覚えはない。
「お金なんていらないんですけど」
「……用件は?」
 えらそうな言い方なのに、なぜか不思議と腹が立たない。それ以上に、この声になぜか聞き覚えがあった。
「会ったこと……あります?」
「なに?」男性の目がじっと私の顔を見る。「いや、ない」
 そして、私も男性の顔をじっと見た。そして、気づいてしまった。学校じゃないとはいえ、好きな人の顔さえわからないなんてどうかしている。
「そっか……先生、私服だとこうなるんだ」
 ぎょっとした顔を浮かべた後、
「……何年何組だ?」
 と、先生は私の顔を凝視する。
 それもそうだ。学校では髪はストレート、メイクはうっすら眉を書くていど、ネイルアートもピアスもタトゥーシールもない。
「三年六組。女は化けるってやつ?」
「俺に気づいたのは君が初めてだ」
 先生もたいした変身ぶりだ。いつもきちんと固められた髪は無造作に下りているし、隙のないスーツは今はシャツとジーンズに変わっている。服装はシンプルなのに、私には眩しいほどにかっこよく見える。
 先生を見抜いたのは私が初めて、その言葉にさっきまでの退屈な気持ちがどこかへ飛ぶ。
「先生、どっか行くとこ? ショッピング? ごはん?」
 彼女とデート、という言葉はわざとはずした。当たっていたら困るから。
「人と会うんだが時間までコーヒーでも飲もうと思って……」
「え、やだ、彼女? デート?」
 やっぱり、気になってしまう。彼女なんていたら、告白する間もなく失恋が決定する。
「いや、男三人で待ち合わせて……」
「あ、じゃあ合コン? 先生行くの?」
 口を閉じ、むっとした表情で先生が私を見下ろす。
「男三人で酒を飲むだけだ」
「あ、なんだ。よかった」
「どうして君に問いつめられるんだか……。じゃあな」
 人の流れに戻ろうとする先生の腕を両手で抱え込んで引き止める。
 また、むっとした目が私を見下ろす。学校では見られない先生の表情に嬉しくなる。
「パフェ、ある?」
「どこに?」
「先生が今から行くところに」
「ない」
「じゃ、ケーキは?」
「……ある」
「食べたい。一緒に行きたい。お金も払うから」
 無言で私の手を振り払って歩いていく先生の後をついていく。


 先生の向かっていたカフェは裏通りにあった。シックでおしゃれな雰囲気の外装に腰がひけたけど、先生に続いて平気なふりをして入る。
 店内は小さなボリュームでクラシック音楽が流れているだけの、とても静かな空間だった。もちろん、私みたいな女の子は店内には見当たらず、ポツポツと年配の人たちが座っている。
 先生が頼んだコーヒーと、私の頼んだフルーツタルトがテーブルに並べられる。
 フォークをさして一口食べてみると、今までに味わったことのないものが口に広がった。足をばたつかせて、先生の腕を何度も叩く。
「……何だ?」
「これ、やばい。おいしい。マジでこんなの食べたことない」
「よかったな」
「うん、よかった。ああ、ホントおいしい。先生もかっこいいし、なんか……やばい」
 ケーキのおいしさに感動しているだけだったのに、目の前に座る先生のかっこよさや、いろんな思いが胸に収まりきらず、涙になって頬を伝い落ちていく。食べていれば止まると思っていたのに、フルーツタルトがなくなっても、涙は全然止まってくれない。
 先生はコーヒーを口に運びつつ、そんな私を黙って見ている。その静かな優しさがうれしくて、やっぱりまた涙がこぼれる。
「何か、あったのか?」
 テーブルにあった紙ナプキンを大量に消費して、私はメイクの邪魔にならないように涙を拭う。
「私さ、先生のこと好きなんだ。だから、私服の先生見られてうれしいし、二人でこんなデートみたいなことしてるし……とか考えたら感動しちゃって。こんなとこでいきなり泣き出すとか……私やばいよね。ごめん、ごめん。もう止まったから」
 鼻をすすりあげ、大きく息を吐く。よし、落ち着いた。
 でも、今度は先生がおかしい。困ったような顔で私を見ている。
「先生? どうしたの? 何かあった?」
「聞き流して……いいのか?」
「何を?」
「君に告白のようなものを……された」
「いつ? どこで?」
「言ったことを振り返ればわかる」
 先生に言われて、この店に入ってからの会話を頭で振り返る。ついさっきのことまで思い出し、ようやく私の『告白』を見つけた。
「なかったことに……あ、でも先生が好きなのは本当だし……言っちゃったものはしかたない? でも、卒業式でかっこよく言おうと思ってたのにな。ふられても卒業のお祝いのキスくらいはしてもらってさ。うまくいったらエッチしちゃったり? それなのに……あーあ、本当にバカだね、私」
「君は……思ったことが全て口から出るようだな」
 私がテーブルに散らかした紙ナプキンを、先生が一ヶ所に集めていく。その手に自分のものを重ねた。
「先生、彼女いる? 私とかどう?」
 先生は私の手を乗せたまま、無言で紙ナプキンを集めていく。やがて集まったそれらをケーキの皿の上に盛った。
 それから、ようやく先生は私の手を引きはがした。
「彼女はいない。卒業までは付き合えない」
 手を伸ばして、もう一度、先生の手に重ねる。今度は先生も抵抗しなかった。
「卒業したら付き合えるってこと? 私への恋愛感情みたいなものってある?」
「全くない、ことも、ない。卒業したら、だ」
「え、なんか、信じられないんですけど」
「なら、信じなくていい」
「ちゃんと信じる。……じゃあ、キスとかエッチとか先生とできるってこと? 考えるだけでやばいね。この手がいっぱい触っちゃうわけ? うわ、想像だけでドキドキしてきた。ラブホなんて行ったら私どうなるんだろ」
 また、手が強引に引きはがされてしまった。
「卒業してから、だ」
「お肌のケアはバッチリやっとくから、先生、楽しみにしててよね」
「……卒業してからだ」
 やっぱり、むっとしたような先生の顔。
 でも、その頬は少しだけ赤くなっていた。


 ◇終◇


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今後の創作の励みにさせていただきます。
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