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関係:憎まれる男と憎む女
場所:社長室的な場所
内容:ずっと彼を憎んでいた。なのにどうして私は後悔しているのだろう

とある恋愛ゲームの敵ボスが女主人公を想うような歌を聴いていたらむしょうに書きたくなったので。二次として書いてもよかったんですが、だいぶ前のゲームなので設定や話を忘れてたのでオリジナルで書きました。
完全なる衝動なので二人の過去や背景は深く考えずに読んでいただけると助かります。なんとなく、今回は女性よりも男性のほうが想いは深いかもしれないな、と思ってたりはしますが、そこはもう読まれた方でお好きに二人を作り上げてください。
あまり作品のラストについて語ったりするのは好きではないので、いつもは読者の方の想像にお任せしてますが、今回はネタバレ覚悟で一応書いておきますと、ラストの彼は死んでいません、とだけ。
歌のせいかはわかりませんが、なんか今は「私を憎いのなら憎むがいい。お前に殺されるなら本望だ」みたいな話が書きたくてしょうがない(笑)
敵対しているけど惹かれあう。でも互いに信念があるから想いを告げることはできない。こういうの好きなんですよね~。

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 ++ 心の裏 ++

 あの頃からずっと憎いという感情しか彼へは抱いていなかった。
 刃を彼の体へ埋め込むことへ何のためらいもなかったはずだ。
 なのに、彼の腕から流れ出る朱に私の足はすくんでしまう。なぜか、後悔と共に押し寄せる何かが私の頭を支配している。
「どうした? 憎しみのままにもっと深く刺せばよかろう?」
 私の持つ刃に肉がさらに深く入り込んでくる。
 感触に耐え切れずに私は刃を投げ捨てた。
 私と彼の間に、なおも血の滴は落ちつづけている。
「あの日、お前に破瓜の血を流させたのは私だったな。今度は私の番ということか」
 落ちた刃を拾い上げ、彼はハンカチで何度も拭う。そう、私の指紋を消すかのように――。
「何を……しているの?」
「お前のような女と関わっていたと知られたくないのでな」
「最初に関わってきたのはあなただわ」
 血みどろになった刃を放り、彼は革のソファへと倒れこむように座った。
「ずっと私を思い続けてきたのは……お前だ」
 彼の腕から流れたものがあちこちに染みを残している。それらを踏みしめるようにして、私は彼へと近づいていく。
 私の指を彼の赤い手が絡めとる。
「思ってきた? 憎んできたのよ、ずっと……」
「そして、私はこのざまだ」
 私の手を握りながら、彼が嬉しそうに笑った。
 手を払いのけたけど、赤いぬめりは私の指になおも絡みついている。
「自業自得でしょ」
「ああ、そうだ。だが、これで終わりだろう?」
「……どういうこと?」
「もう、お前が復讐のため私に近づくこともない」
「当たり前だわ」
「……残念だ」
 見上げる彼の目は、私の心に入り込もうと視線を合わせてくる。
 呼応するように私の中の何かが表に出ようとする。私はそれを見たくはない、認めたくない。
 憎んできた男の視線に、心が歓喜に震えるなどあってはならないのだ。
「……殺せばよかったわ」
 殺したいのは彼なのか、私の心なのか――。
「今からでも遅くはなかろう。私は逃げない」
「いいえ、あなたは生きればいいのよ。私の与えた傷を背負ったまま」
「それなら、もう一つ背負いたいものがある」
「……なに?」
 私の腰に彼の腕が回される。
「お前の残りの人生……」
 腰にしがみついている彼の頭を引き離そうとするけど、私の力が弱いのか、彼の力が強いのか、なかなか離れてくれない。
 手で引き離すことを諦めた。
「離して……」
「私に近づいたお前の全てが嘘だとは思えない」
「嘘よ。この日のために作り上げた嘘」
「私は傷を負っている。お前が全力で振り払えば容易いこと」
 彼は私を――心を見抜いていた。
 私のような小娘の気持ちなど、彼にかかれば簡単に見破れるかもしれない。
 心から目をそらすことに限界が近づいているのはわかっていた。だから、今日、実行に移したのだ。憎しみと思慕の連鎖から逃れられると期待していた。
 だけど、残ったのは彼への強い想いだけ。殺しきれなかった。
「そうよ、振り払えないの。振り払いたいのに……」
 彼が立ち上がって、私の体を腕の中に包み込む。
「気持ちのままに答えろ。お前の拒絶なら私は受け入れる」
 私なら、体だけでなく、彼の心にも傷をつけられるのだ。これ以上の復讐はない。
 彼の言葉通り、気持ちに従って私は答えた。
「憎しみだけではない心で、ずっと……あなたを想ってきたわ」
「そうか……」
 彼は微笑み、ゆっくりと私を腕に抱いて崩れ落ちていった。


 ◇終◇


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