鈍感眼鏡少年なSS

関係：学生カップル
場所：登校中の道
内容：彼は朝に弱い。「うん」とばかり答える彼に私は「キスしてもいい？」と聞いてみた――。

私に感想をくださったことでお付き合いをさせていただいている携帯イラストサイトさんのイラストに触発されて書きました。
BL風味で、ボサ髪で眼鏡な少年が男性の手にあごをつかまれて「キスしていい？」と聞かれて寝ぼけまなこで「うん」と答えている、そんなイラストです。
眼鏡少年の相手は手しか描かれていないので、女子相手として妄想できたりもするわけです(笑)　というわけで学生カップルとして書いてみました。
なんとなく好奇心もあるので男同士バージョンも書いてみようかな、と画策しております。

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　++ 睡眠不足 ++

　高校生なのに、朝の彼はいつも眠気を引きずっている。とにかく朝に弱い。でも、歩いて私と登校するために早起きしてくれる。
　眠気よりも私への気持ちのほうが勝っている、なんてうぬぼれてはみるけど、寝ぼけているせいか会話があまり円滑に進まない。いつもどこかすれ違う。
「提出する科学のプリントって全部できた？」
「あー、うん」
　簡単にくしで梳いただけの前髪をいじりながら彼が頷く。私の友達にはださいと不評ではあるけど、眼鏡と相まってなかなか似合っているんじゃないか、と私は思っている。
「私が昨日電話した時にはできてたの？」
「うん」
「言ってくれれば答え教えてもらえたのに」
「そうだね」
　彼はあいづちを打つだけで、私の話は聞いていないんじゃないか、とふと思う。
「私って今日もかわいい？」
「うん」
「一緒に学校に行けて嬉しい？」
「うん」
　我ながらバカな質問をしてると思うけど、これらは前座にすぎない。次が本番。
　少しだけ緊張しながら次の質問。
「じゃあさ……キスしていい？」
「うん」
「本当に？」
「うん」
　歩く彼の前に立って、少しだけ背伸びをして顔を近づけていく。
　――と、彼の両手が私の顔を挟み込んだ。
「なに、してんの？」
「えっ、キスだけど？」
　彼の手を顔から引き剥がそうと手を重ねるけど、がっしりとつかんで離れない。
「道でするのはイヤなんだ……」
「知ってる。だから、うんって言った時はびっくりした」
「誰が？」
「私の彼氏が」
「俺が？」
「うん、そう」
　私の顔から彼の手が離れる。
　背伸びをしていた私のかかとがすとんと地面に着いた。
　呆然としている彼の顔を覗き込む。
「『キスしていい？』『うん』『本当に？』『うん』というやりとりをしたんだけど。目、覚めた？」
「全然おぼえがない」
「うわ、ひどい」
「……ごめん」
　こんなオチだろうと予想はしていたから、私はそれほど傷ついてはいない。だけど、彼があまりに落ち込むからおもわず笑ってしまった。
「いいよ。朝は弱いって知ってるもん」
「話を聞いてることは聞いてるんだ。ただ、頭がついていかない」
「私と遅くまで電話しないで早く寝ればいいのに。私のせいってわかってるし……」
　こんなことを言いながらも、彼に電話を切られれば寂しくなるのは私のほうだ。だけど、そんなことを言って彼の睡眠の邪魔はしたくない。
「俺も楽しいから……いいんだ」
「そんなこと言われたら、毎晩電話するよ？」
「うん」
　嬉しくて舞い上がっているから、彼の頷きが寝ぼけているせいなのか判断できない。さっきのパターンもあるので一応確認しておく。
「寝ぼけてたって言うなら今のうち」
「言わないよ」
「……目の覚めるようなキスする？」
　そう言って彼へ顔を近づけたけど、先ほどの前科があるせいか一歩後ろへ下がられてしまった。
「またの機会に」
　彼は私を追い越して早足で歩いていく。
「どういう意味？」
　言いながら私は彼を追いかけた。


　◇終◇


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