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関係:おっさんと女子高生
場所:早退で帰宅途中の道

これを書いたのは、実はぎっくり腰になる以前……4/15付近です。ずっと更新作業できずに放置状態になっていました。
私はいつも接骨院からの帰りに歩くのですが、歩いている時はやはりヒマなわけで……路上で偶然ばったり仕事中の彼氏と会ったら面白いな、とネタが浮かび「さてカップリングはどうしよう」と思っていた時に、某所にて拍手コメントでおっさんと女子高生好きとあったことを思い出し、話的にもこの二人だとしっくり書けそうだったので、本当に久しぶりにおっさんと女子高生書きました。素直に年の差にしてもよかったのですが……おっさん書いてみたら楽しかったので(笑)

腰痛からかなり回復しました。割と長時間座っていられるようになったので、腰の調子を見ながらぼちぼち創作意欲を発散していこうかと。
創作意欲だけは失っていないので、書く時間がある時にちょこちょこ吐き出すと思います。
最近は本当にもうSSばかりの更新ですが、のんびりお付き合いくださると嬉しいです。

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 ++ 病人 ++

 発熱での早退。ふだんは平気な通学ルートが、とたんに辛いものへと変わる。親が共働きなのが恨めしい。
 ようやく家に近づいた、と思ったら、近くの家から見知った顔が出てきた。
「あっ!」
「……おっ」
 その人――年上な彼氏の顔を見たとたん、疲れは本当に飛んでしまった。うれしくなって走り寄る。
「こんなとこで会うなんて初めて? あ、外回りってやつ?」
「てめぇは学校の時間だろ?」
「熱で早退ですよ」
「……本当か?」
 彼の後をついていきながら話す。少し離れた場所へ車を置いているらしい。
「本当に熱出てるんだって、ほら」
 おでこを差し出すと、彼のひやりとした手があてられた。
 キー操作によって車のランプが光り、助手席のドアを開けた彼は鞄やファイルを放り込む。
「さっさと帰って寝ろ」
「せっかく会ったのに? 家すぐだからお茶でも飲んでいかない?」
 助手席のドアを閉めた彼は、運転席へと歩いていく。車に乗ってしまったら、彼は行ってしまう。
 仕事だとわかっているけど、熱のせいか、さみしくなった気持ちが抑えられない。これじゃあ、ただのわがまま娘だ。
「きっちり挨拶もしてないのに、親の留守中に勝手に家に入れるわけがねぇだろ」
「別に誰も見てないし、私が言わなきゃわかんないって」
「お前んちには行かない」
 この頑固さに惹かれたところはあるけど、ここまでばっさりと言われたら、本当に泣きそうだ。
「わかった……」
 本当は全然わかってない。でも、わがままを見せて彼にこれ以上あきれられたくもない。
 運転席に乗り込む彼に、
「お仕事がんばってね」
 ありきたりな言葉しか出てこなかった。
「メシは?」
「はあ?」
「てめぇの昼メシどうするつもりだ?」
「家にあるものを適当に。めんどくさいから食べないかも、だけど」
「制服はまずいな……。着替えるならメシ連れて行ってやる」
 昼ごはんも抜きで、一人で寝るだろう時間を覚悟してたから、この彼の言葉は本当にびっくりしてうれしくなった。
「着替える! 行く! 待っててくれる?」
「早くしろよ」
「うん!」
 あわてて家に向かって走る。
 体は本当にだるいのに、こんな時に走れる気力ってすごいと思う。


 着替えて、家を出てきた私の足取りは少し重いものになっていた。
 家に帰って、着替えながら頭が少しずつ冷静になっていったのだ。考えれば、熱の出ている私が傍にいると、彼に熱がうつってしまうかもしれない。私にとっては学校が休めてラッキーなことだけど、彼にとっては仕事を休まなければならないことだ。
 彼はそのことに気づいていないから、私が言わなければ一緒にお昼ご飯を食べにいける。でも、気づいてしまった以上は、言うべきだろうとも思っている。――迷っていた。
 助手席ではなく、運転席へと近づいた私に、彼がけげんな顔を向ける。
「どうした?」
「やっぱり、やめようかなと思って」
「熱が高くなったか?」
「そうじゃないけど……」
「着替えてきてんじゃねぇか。行くつもりだったんだろ?」
「そうだけど……」
「うっとうしい。はっきり言え」
「私、病人だし、うつったらイヤでしょ?」
「そのときゃ、その時だろ」
「でも、やっぱり……」
「……めんどくせぇ。乗れ。こうやってうだうだ話してる間にメシが食える」
「いいの?」
「乗・れ」
 手を伸ばした彼によって、助手席のドアが開けられた。
 彼からの返事が、乗れ、の一点張りになりそうなので、言われた通りにおとなしく車に乗る。
「シートベルト。シートは楽な角度にすりゃいい」
「うん、どうも」
 シートベルトをつけ、少しだけシートを倒す。もたれるだけでもかなり体は楽だ。
 動き出した車は、見慣れた住宅街を走っていく。
「たかが高校生の熱が簡単にうつるほどな、こっちはやわな体はしてねぇんだ。有休も二週間分ほど残ってる」
「うつんないとは限らないし。それにさ、家にも行かないって言うから、私と一緒にいたくないかなって思って」
 そこまで言ってあわてて付け足す。
「あ、でも、仕事だから仕方ないってのはわかってる」
 運転に集中してしまったのか、彼からの返事はない。
 交差点の赤信号で車が止まる。ハンドルから手を離し、彼が肩のこりをほぐすように首を動かした。
「まあ、あれだ。一人でメシ食うよりは、だ」
 体はさっきよりも楽になっていたから、余裕が出てきた。少しだけ体を起こす。
「ね、もしかして、私と一緒に食べたかった?」
「……寝てろ」
「私は一緒にいられてうれしいけど、そっちは? うれしい? どう?」
 信号が青に変わった。
 からかうような質問は無視されるだろうな。
 そう思いながら、再びシートへ体をもたれさせた時――。
「そうじゃなけりゃ誘わねぇな……」
 油断していたから、さらっと聞き流してしまった。
「いま、なんて言ったの?」
「……寝てろ」
「うれしいってこと?」
「……寝・て・ろ」
 あの言葉を、もう一度聞くことは無理らしい。
 はーい、と返事して、隣の彼を見ながらゆっくりとまぶたを閉じた。


 ◇終◇


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読んでくださってありがとうございます。
よかったらコメント欄などから感想の声を聞かせてください。
今後の創作の励みにさせていただきます。
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