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関係:くノ一と武将
場所:燃える城
内容:城から逃げようとする私。斬り捨てた男の後ろから現れたのは鎧姿の彼だった。

簡単な導入部だけ考えて書き始めたのですが、溜めてきた想いを二人がポロリと口にするので、危うくすんなりハッピーエンドとなってしまうところでした(笑)
今後の展開を考えているわけではないですが、互いに想いを打ち明けあって終わり、という簡単なハッピーエンドにはならないと思うのです、この二人。今回は状況が状況だったから漏れてしまっただけで。
ただ、今回のSSで何かが進展したような気はします。というか、今回のSSを書いたことで近々二人の話にケリがつけられそうな気がしてます。でも、切ない関係が好きなので、この二人はあまり手放したくないんですよね~。どうしたものか。
周りが燃えている中でこんなに悠長なことできるのか、というのはもうご都合主義ということで大目に見てくださると……(笑)


近況→相変わらず歴史ゲームにハマっ(以下略
このゲームをやっている時は頭が和風妄想モードになるので、おそらく忍者の彼かくの一しか書けないような気がします(^_^;)
今回は大黒まきの「胡蝶の夢」をBGMにしてました。私の脳内で勝手にくノ一SSイメージソングにしてます。たまに陰陽座も和風SS執筆のBGMにしてたり。

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 ++ 借り ++

 この城の姫は、私の目の前で先ほど自刃した。侍女たちも後を追ったが、私は生きて戻らなければならない。燃える城と共に倒れるわけにはいかないのだ。
 出来る限りの軽装で、短刀を手に脱出口を探す。
 炎の間に見える人影を待ち伏せ、短刀で斬り捨てる。
 そして、屍となって倒れた男の向こう――鎧に身を包んだ彼がいた。
 次の敵を倒さんと踏み出そうとした足がためらう。
 彼がさげていた刀を構えた。
 そう、私たちは敵同士なのだ。彼の姿を見て何をためらうことがあるのだろう。
 火の手がまわる。彼の隙をうかがっている暇などない。
 殺気を持たないまま踏み込んだが、以前よりも彼の刀は素早かった。男の渾身の力に敵うはずもなく、短刀が炎の中へはじけ飛ぶ。ひゅっと風を切り、刀が私の眼前につきつけられた。
 あれほどの速さで繰り出した刀を寸前で止められる、ということは彼は――いや、彼も私を殺す気ではなかったのかもしれない。
 そこまで考え、くだらない幻想に自分を笑う。
「剣術に長けた人なのね」
「免許皆伝だ」
 炎の明るさが彼の顔を照らす。
 生きて戻るのは任務のためだ。だが、本当は彼に会いたかった。怖くはない死に怯えたのもそのせいだ。
 彼に会えたうえに、その手で最期を迎えられるのだ。こんな状況だというのに、穏やかな気持ちが心に広がっていた。
「……あなたでよかった」
 殺して、と言うかわりに目を閉じる。
 炎の唸る音が耳にうるさい。
「俺と共に……生きてみないか?」
 一瞬、聞き間違えたのかと思ったが、目を開けると私以上に驚いた表情の彼が目の前にいる。
「私と、あなた、が?」
 はっ、と何かから覚めたように、彼は刀を下げた。
「……お前には借りがある。殺すつもりはない」
「生かせば敵になる。それでも?」
「好きにすればいい」
 炎の大きさに舌打ちし、狭間へ消えていこうとする彼の後姿に叫ぶ。
「先ほどの言葉はあなたの心?」
「そう思ったこともあった」短刀が私の前へと投げられる。「……それだけのこと」
 かがみこんで拾えば、私のものではない短刀が手にある。
 生きろ、と彼に言われたような気がした。
 共に生きることはできないかもしれない。だが、彼にまた会いたい。
 燃えてしまわぬよう短刀を懐に抱え、炎の先を見据えて足を踏み出した。


 ―了―


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読んでくださってありがとうございます。
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今後の創作の励みにさせていただきます。
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