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関係:忍者と姫(今回は忍者出てきません……)
場所:城内の一室
内容:彼と同じ里の者だという女性は私にとある過去を語った――

今回はたぶんかなり激動だと思います。基本的に私のSSはいつもそれほど大きな動きなく終わるので(^_^;)
だいぶ前になりますが、前回の忍者と姫を書き終えた後に、姫の母の過去の構想はうっすらと頭に浮かんでました。そろそろ彼の行動の理由付けを考えていかねば、と思っていたところで……。
ただ、詳しく煮詰めていなくて、使いどころにも困っていて、どういう風に明かさせようかと思っていたのですが、ふと同じく以前から脳内にあった女性キャラを出してみたら……と考えたとたんに脳内で彼女が動き始めました。それまでの難産が嘘のようにスラスラ書けたので私自身驚きました。
ちなみに、この女性が彼の○○だということはいつか書こうと思っていたネタです。姫にもそういう話があったように、彼にもそういう話があってもおかしくはない、と思っていたので。
ちょっと私の予想以上に展開が動いてしまった感が(駆け落ちフラグがたったような気も:笑)。続きは近日書く予定ですが、展開が展開なのでおそらくそれなりの時間はかかると思われます。
この二人のSSがこんな風になるとは本当に予想してないので、私自身びっくりで戸惑ってます(笑)

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 ++ 許嫁 ++

 すれ違う女の懐から光るものが飛び出した瞬間、敵国の忍が女である可能性もある、と気づいたが、とっさに避けられるほどの素早さもなく、ただ、己の命を奪おうとしているものをじっと見つめていた。
 だが、向けられた刃は私の喉元で止まる。
「あんたと話がしたい。誰も来ないところへ案内してくれるかい? 命まではとらないさ」
 有無を言わせぬほど強い声音。へたに人を呼べば被害を増やすことになるだろう。即座に命を奪われなかったことを幸いとして、相手の話し合いに応じることにした。
 使われていない部屋へ彼女と二人で入る。刃は懐へと戻された。
「こんなアタシの言うことなんざ聞いてくれないと思ったけど、話の早い姫様で助かったよ」
「あなたは忍でしょう? 私が勝てるはずもないわ」
「……あんた、やっぱり忍を知ってるね?」
 彼女は私の何かを知っている風ではあったが、普通の城の姫が忍を知ることなどない。どう答えればいいのかわからず、答えに窮してしまった。
 さらに彼女は私の耳元に口を寄せる。
「通ってくる忍の男がいるだろう? アタシとその男の関係を知りたくはないかい?」
 同性の私から見てもどきりとするような仕草で、彼女は侍女姿に扮した胸元を指で覗かせる。
 たったそれだけのことで、彼女の体を抱きしめている彼の姿が浮かんだ。
 忍といえど、彼女の指と肌は美しく艶めいている。
 二人の関係など聞かなくてもわかる。そう答えようとした瞬間、彼女が笑った。
「残念だけどまだなんだよ。でも、いずれそうなる関係、と言っておこうか」
「どういうこと?」
「里での許嫁。だからね……」キッと彼女の視線が鋭くなる。「姫様とは絶対に一緒にはならない」
 彼と一緒になれないのは、彼女に言われるまでもなくわかっている。それでも、私は彼以外と結婚をするつもりもない。だが、彼も私と同じとは限らないのに、どうして今までそれを疑いもしなかったのだろう。
「わかっているわ」
「アタシがいようといまいと、あいつはあんたと一緒にはならない。いや、なれないんだ」
 闇に溶けそうなほどつかみきれない彼の生活感が、彼女の口を通して伝わってくる。
 彼には、里もあれば家もある。そして――許嫁もいる。
 彼女と言い争えるほど、私は彼のことを知らないのだと思い知らされた。
 黙っている私へ彼女は続ける。
「あんたの母親は?」
「私が小さい頃に病気で……」
 なぜ、ここで母のことが出てくるのか。彼女の口から彼の真実を聞かされるのが怖い。遮って逃げ出せばいいのだが、彼のことを知りたいという好奇心が勝っていた。
「あんたみたいな姫様には少々厳しい話になるよ?」
「いいわ。知りたいの」
 ふーん、と言った後、一呼吸置いて彼女が話し始める。
「昔、一人の女と男が想いを交わした。だけど、女――城の姫が別の男と結婚したことを機に、相手の男――忍も里の者と結婚したんだ。互いに子供も産まれた。それでも忘れることのできなかった二人は手をとって互いに家族を捨てて逃げた……」
「では、私の母様は生きているの?」
「厳しい話だって言っただろう? 男は里を抜けたんだ。平和な生活など待っちゃいない。結局は女と一緒に殺されたのさ。……これが、あんたの母とあいつの父の話。あいつと一緒になれば、あんたも同じ末路を辿るかもしれない。あいつはそれを怖れている。だからね、あんた――城の姫様なんかと一緒にはならないよ」
 声にならない衝撃が頭と胸を打ち続けている。
 私は今まで知らされなかったが、彼はすでに知っていたのだ。これだけでも、私がいかに甘い中で育ってきたのかがわかる。彼はどんな気持ちで私と接していたのだろう。
 私から離れた彼女が得意げに笑った。
「ほら、だからアタシと一緒になったほうがいいんだよ」
 彼と一緒になりたい、なれない。わかっている。だが、他の女性と結婚してほしくない。
「一緒になれるなら……命を捨てて逃げてもいい」
 無意識に呟いてから、自分の心の底にあった覚悟と気持ちに驚く。
「あんたがあいつを想ってるなら、そんなことできるわけないさ! 逃げるためにあいつは里を抜ける。そうなれば追っ手も来る。自分が好いた男をそんな目に遭わせたいのかい? あんたは姫様で、アタシは里の女なんだよ。あいつもあんたも、そう簡単に捨てられない」
 実態のない刃を私の心に吐き捨て、彼女は部屋を出て行った。
 彼の声を聞きたい。あの腕で抱きしめてほしい。
 呆然としたまま部屋を出て、まだまだ落ちそうにない陽を見上げた。


 ―了―


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無題
はー。
身分の違いはわかってはいても切ないですね。
姫様がんばって!とも言えないし・・・。
ほたる 2008/11/08(Sat)01:44:31 編集
Re:無題
ほたるさん、感想ありがとうございます。実は、ついさっきまでこれの続き書いてました。
私はため息出るほどの切ない話が大好物なので、この二人の関係は切ないながら書くのが楽しかったりします。
今まで謎だった(設定を考えていなかっただけ……)彼側の事情がわかってしまうと、姫をてばなしで応援するわけにもいかないですよね。今回のを書いて、姫も私も、彼に対して強く出られなくなってしまった感じです。
相変わらず今後どうなるかはわかりませんけど、切なさたっぷりな二人であることは確かなので、よかったらまた読んでやってください。
【2008/11/08 02:29】
SS探しなどにどうぞ
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