忍者ブログ
一応管理人の日記。コメント書き込み歓迎。SSへの要望や催促は禁止。携帯からも見られます。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

関係:忍者と姫
場所:昼の庭→夜の部屋
内容:庭で侍女と話す姫。彼女は忍を見たことはないと言う。その夜、訪れた彼に姫はある問いを投げかけた――

久しぶりの忍者SSです。
とりあえず、最近暖かいので「庭で花を愛でつつ侍女と忍者のことを話す」というのを書きたくて書いたんですけど……どうせだから忍者も出すか、と後半はどういう話にしようか悩んだ末、なぜかものすごいシリアス展開に(笑)
本当はいつもみたいにほのぼので終わる予定だったのです。ま、この二人は関係がすでにシリアスなので(^_^;)
あーやっぱ忍者の彼を書くの好きです♪

日記……書いてない(笑)
とりあえず腰は好調。
一時期「龍が如く2」を攻略していたのですが、無事にクリアし、また最近は創作意欲が復活している模様です。
むしょうにシリアスで切ないのを書きたい衝動にかられてます。今回のでもまだ発散できてないみたいです。

---------------------------------------------------

 ++ 姿 ++

 侍女と二人で庭へと下りていた。
 眩しい陽光に照らされた花が、庭を鮮やかに彩っている。夜にしか現れない彼が、このような光の下で花の色を愛でることなどあるのだろうか。ふと、そんなことを想う。
「姫様、どなたか想う殿方がいらっしゃるのですか?」
「えっ……なぜ?」
「焦がれるような目で花を見つめておられます」
 私と歳もそれほど変わらず、幼い頃からずっと傍に控えているが、彼女から話を切り出すことはめったにない。いつもじっと私の話すことを聞いてくれる。私にとっては、姉のような存在でもある。
 だからこそ、突然のこの言葉には驚いた。
 彼女は私の顔を見つめて、ただ微笑んでいる。特に何かを追求することはない。私が話し出すのを待っている。私が何も言わなければこの話題は終わるだろう。
「ずっと嫁ぐのを拒んでいるのが不思議?」
「いいえ」
 離れたところに警護の男が立っている。
 少しだけ声をおとした。
「忍と呼ばれる者を見たことがある?」
「隠密を常とする者のはず……。姫様は見たことがあるのですか?」
「ええ、あるわ」
「もしや、姫様はその方を……?」
 察した彼女は全てを口にするようなことをしない。視線で、言葉の続きを問いかけてくる。
 彼女と視線を合わせ、ゆっくりとうなずいた。花びらの落ちてきた先を見上げる。
「でも、問題があるの」
「一つだけ、ではありませんね」
 彼女も木を見上げ微笑む。
 忍に嫁ぐ方法どころか、彼の名や想い――私は何も知らない。
 いや、それよりも城の娘が忍を想うことがすでに問題なのかもしれない。
「ですが姫様、想う気持ちは止められません」
 私は何も言っていない。
 だが、私の表情から何かを察したのか、彼女は強い言葉でそう言った。


 夜、訪れた彼は黙って立っている。
 私が何も言わなくても立ち去ることはしない。
「侍女に言ったわ。あなたを想っていること」
 隠密を常とする忍が私の前に立っている。
「彼女は忍を見たことがないそうよ。……何故、あなたは私の前にだけ姿を現すの?」
 責めるつもりはなかった。だが、彼が訪れなければ、私は普通の姫としてどこかへ嫁ぎ、忍と出会うことなく一生を終えていただろう。
 かすかな風と共に彼が背を向けた。
「影は……闇に還る」
 その言葉だけで、彼がもうここへ来ることはないのだと気づいた。言い訳もせず、彼は全てを秘めたまま私から去ろうとしている。
 単の裾が乱れるのもかまわず、私は彼へと走り寄る。腕にしがみついた。
 薄明かりの中で必死に目をこらして彼の顔を覗き込む。
「行かないで」
「言葉の内におぬしの真実が見えた」
 はっきりとは見えないが、彼が私の目をじっと見つめているような気がした。
 今さら、あの言葉を嘘だとは言えない。私の数ある本音の一つなのだ。
「でも、もう止められない。……あなたも、そうなのでしょう?」
 彼のまとう気配が揺れた。
 腕を振り解かれる。否定されたのだと思った瞬間、体をきつく抱き締められた。
 私も引き締まった彼の体へ腕を回す。今は離れたくない。
「……止めねばならぬ」
 呟くような彼の声が耳に静かに響く。
 自分に言い聞かせているのか、私に言い聞かせているのか――。
 やがて、どちらからともなく体を離し、私たちは見つめ合う。
「また、あなたに会いたい」
 しばらく私を見下ろしていたが、結局、何も答えないまま彼は闇の中へ去っていった。
 彼が言葉を残すことはない。
 ただ、私の体には彼の温もりが染み付いていた。


 ―了―


---------------------------------------------------
読んでくださってありがとうございます。
よかったらコメント欄などから感想の声を聞かせてください。
今後の創作の励みにさせていただきます。
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
無題
静かな情熱を感じる二人。。立場的に答えられない忍に切なくなります。
ながの 2008/03/17(Mon)15:50:19 編集
Re:無題
ながのさん、感想ありがとうございます。
なんだか静かな二人に感化されたのか、ながのさんの感想までしっとりとした短文に感じられるのですが(笑)
私の中でのこの二人を書く時のテーマというかキーワードが「静か、熱、光と闇」なので、静かな情熱を感じたと言っていただけると嬉しいのです。
忍の彼はいつも明確な答えは言いませんよね(^_^;) はっきり言わない、もしくは言えない彼に密かに魅力を感じている私です。
今は切なさ書きたい期間に入っているので、さらに切ない展開を書いてしまうかもしれませんが、楽しんでいただければ……。あ、先生と生徒じゃないSSにながのさんの感想がいただけるとは……(笑)
【2008/03/17 20:27】
SS探しなどにどうぞ
最新コメント
ながの<返信済
(07/27)
ながの<返信済
(05/05)
killerqueen<返信済
(05/02)
killerqueen<返信済
(04/16)
killerqueen<返信済
(01/28)
プロフィール
HN:
水月
性別:
女性
自己紹介:
年齢:30代前半
在住地:近畿地方
執筆歴:15年ほど
執筆ツール:WinXPノートパソコン
QRコード
忍者ブログ [PR]